コミュニティ
光学屋さんのまめ知識
022|スペクトル
「白色光」が白色とは限らない!

「色々」と言うぐらい、色には無数の種類があります。でも、色は赤、緑、青の3原色で現せると言うのが視覚工学の話です。物理学では色は「スペクトル」で現します。スペクトルには無数の純色が存在します。この純色には1つ1つに波長と言う番号が付けられています。

He-Neレーザの光は632.8nm(赤色)、YAGレーザの2倍波は532nm(緑色)、紫色半導体レーザは405nm(紫色)
と言ったようにです。

これ対し、波長が連続的につながったようなスペクトルを「白色光」と呼びます。しかし、「白色光」と言っても、赤色や、青色の場合、または、目では見えない色の場合もあります。物理で言う「白色光」とは、純色に対し、波長の幅を持った光を指すことが良くあります。


スペクトルに幅があると光の波は「塊」になる

純色は単純な波動関数として現すことが出来ます。

I=[Acos(kx+φ -ωt)]2

波数:k=2 π/λ 波長:λ 位相:φ 周波数:ω
時間:t 位置:x 振幅:A 光の強度:I


しかし、実際には完全な純色は存在しません。He-Neレーザといえども、連続したスペクトルを持っています。
これを、波動関数で現すと次のような波として現すことが出来ます。


純色は永遠に続く波ですが、連続分布のスペクトルの方は、有限な長さを持つ波の塊になります。
しかし、これだと光は一瞬しか光らないことになります。この世は闇に包まれてしまいます。
しかしご安心下さい。通常の光は時間や位置によって位相がバラバラな為、光の塊が幾重にも連なって、途切れることなく進んで行くため、闇に包まれることはありません。


スペクトル幅が狭い光は干渉しやすい、その訳は?

先に述べた光の塊の長さは、光源によって異なってきます。

He-Neレーザ
LD
LED
〜100m
約100µm
約10µm

この光の塊が短くても長くても、見た目には何も変わることはありません。しかし、干渉には重要な影響を及ぼします。

干渉の定義は「同じ光源から出た光が、異なる光路を経て、再度重なる場合」とありました。
この『同じ光源』とは、同一の光の塊のことを表しています。


光の塊が異なる場合は、全く干渉しません。(もしかしたら部分的には干渉しているのかもしれませんが、塊ごとの位相が異なるため、全体を時間平均すると干渉は見えなくなってしまいます。)
光の塊が長ければ長いほど、干渉には有利になります。反対に光の塊が短ければ、干渉は極めて稀にしか観測できなくなります。言い換えると、スペクトル幅が短いものは干渉しやすく、スペクトル幅が長いものは干渉しにくくなります。これを可干渉性といいます。


レーザ光は干渉実験に使えるのに、われわれの周りにある普通の光では特殊な条件が整わないと干渉を起しません。
これが、「干渉」の回の宿題「何故、干渉は実感できないか?」の回答になります。
レーザ光であれば、必ず干渉を起すかと言うとこれも否です。特に半導体レーザはスペクトルが複雑なため、刻々と干渉の状態が変化します。干渉計を作る場合には、コヒーレンシーのことを考えて、適切なレーザを選択する必要があります。