コミュニティ
ちょっとためになる光学勉強会
008|ボールレンズ

トンボ玉(装飾されたガラス玉)は歴史が古く、紀元前4000年ころには、装飾品として使われていたようです。
呪術用?のガラス玉は別として、拡大鏡としてボールレンズを使ったのは、1670年ごろ、オランダのレーウェンフックが初めてだと思います。(NHKの受け売りです。)

ボールレンズは大きい方がご利益(ゴリヤク)が多そうに思えますが、シグマ光機のカタログに掲載されているもの(小球レンズ)はφ1mmからφ8mmの小さなものだけです。
ボールレンズは光学性能があまり良くないため、レンズの口径が大きい場合は平らなレンズを組み合わせて使用することが多くなります。

ところが、レンズの口径が小さくなると、製作が極端に難しくなります。ましてやレンズが薄くなると、つかんだり、レンズを正面に向けることすら骨の折れる仕事になります。

これに対してボールレンズは小さくなっても簡単に製作ができます。また、製作方法のバリエーションも豊富になります。
ガラスを転がして研磨する方法が一般的ですが、融けたガラスを下から空気で浮遊させて、ガラスの表面張力でガラスをまるくする方法も使用されています。

光学的にはどうでしょう?
球の焦点距離はたいへん短く、屈折率1.85のガラスの場合で、ボールの直径の55%になり、バックフォーカス(ボールの端から焦点までの距離)は、ボールの直径の5%の距離しかありません。
焦点距離が短いと、小さなものを拡大して見ることができます(顕微鏡モドキ)。
また、小さな点からの光をできるだけ多く集め、別の場所に導く時に使用されます。このため、ボールレンズはファイバーや半導体レーザと相性が良いようです。

半導体レーザの光をファイバーに導いたり、ファイバーから出た光をフォトディテクターに入れたりする場合に良くボールレンズが使われます。
ボールレンズは球面収差が大きいので、顕微鏡の対物レンズのような精密光学系ではありませんが、コンパクトで費用が安くできることが、好んで使われる大きな理由だと思います。



しかし、ボールレンズを普通のレンズのように使用すると問題が生じます。
下の図のように半導体レーザからの光をファイバーに結合させる場合、ボールレンズの間隔はできるだけ短くする必要があります。
ボールレンズが小さくなればなるほど、レンズ間を通るビームの径は小さくなります。
レンズの収差や光の波動的な性質により、ビームは細くなるとビーム発散量が大きくなり、レンズの間隔を離せば、受け側のレンズからビームがはみ出し、光量のロスになります。


しかし、レンズを近づけ過ぎると別の問題が生じてきます。
ホルダーを使ってボールレンズを調整する場合、ホルダーどうしが近過ぎて設置できなくなります。
一般的にはボールレンズの方を固定して、半導体レーザやファイバーの方を調整するのですが、どうしてもボールレンズを調整したい場合はカラスのくちばしホルダー(セルォックレンズ®ホルダー:MLH-SF)を使うことになります。

もう1つ深刻な問題があります。ボールレンズはくしゃみをしただけで、どこかに転がって行ってしまいます。
透明なので探しても見つかりません。使用する際は必ず予備を購入しておきましょう。